はじめに
私たちは緊張すると、手足が冷たくなったり、指先の感覚がなくなったりします。その一方で、眠そうにしている赤ちゃんの手を触ってみると、その手が温かかったりします。
なぜ、私たちの身体は、このように変化するのでしょうか。これは、私たちの全身に走っている神経の中で、「自律神経」と呼ばれる神経の仕業なのです。
「自律神経」は、「交感神経」と「副交感神経」と2つに区別されます。他の神経と同じように自律神経も、私たちの身体をコントロールしてくれるのですが、この2つ自律神経には、面白い違いがあるのです。
「交感神経」と「副交感神経」との関係とは?
この2つの自律神経の働きの違いについて、最初に挙げた例を使ってお話ししましょう。
まずは、私たちが緊張して、手足が冷たくなっているときです。このときは、「交感神経」が優位になっています。交感神経が働くと、指先やつま先の血管(これを、末梢血管と言います)が細くなります。
血管が細くなると、温かい血液が流れづらくなるため、手足が冷たくなったり震えてきたりします。これは、身体が「緊張状態」にあるときに起きます。
次は、赤ちゃんが眠そうにしていて、手足が温かくなっているときです。このときは、「副交感神経」が優位になっています。
副交感神経が働くと、交感神経とは逆に、指先やつま先の抹消(まっしょう)血管は広がり、温かい血液が流れやすくなります。
このため、手足が温かくなってきたり、眠くなってきたりします。このとき身体は「リラックス状態」にあるからなのです。
「自律神経」を“コントロール”する?
そもそもどうして、この2つの神経を「自律神経」と呼ぶようになったのでしょうか。「心臓」を例にして考えてみましょう。
心臓を動かしている神経も「自律神経」なのです。「交感神経」が働いているときは、緊張状態にありますから、心臓の鼓動は速くなります。
その一方で、「副交感神経」が優位なときは、リラックス状態にありますから、心臓の鼓動はゆっくりになります。
お分かりのように、自分の心臓でありながら、私たちはこの心臓を自由にコントロールすることはできません。つまり、「心臓の鼓動をもっと速く動かせ!」と私たちが自分の身体に命令しても、心臓はそのように速く鼓動しないのです。
心臓の鼓動が速くなったりゆっくりになったりするのは、交感神経と副交感神経のどちらを優位にするかと言う「スイッチの切り替え」によって起きます。このスイッチの切り替えは、私たちの神経が私たちとは「独立」して行ってるのです。
自分の心臓でありながら、この心臓の鼓動を私たちが勝手にコントロールすることはできないのです。
このコントロールは「神経」自身が、私たちとは独立して行っているためです。それで、「二つの神経」をまとめて「自律神経」と呼んでいるわけです。
ところで、私たちとは独立して行っている「自律神経」の切り替えを、私たちが自分の「意志の力」で切り替えられるようになったら、こんな素晴らしいことはありません。自律神経の切り替えが意図的にできれば、緊張状態にある自分をリラックス状態に、自分の意志で切り替えることができるからです。
「リラクセーション法」を活用してみよう。
臨床心理学の世界では、自分の緊張感を取り除き、リラックス状態を作り出すための様々な研究が行われてきました。今日ではこれをまとめて「リラクセーション法」と呼んでいます。
これまでに様々なリラクセーション法が研究、開発され、臨床場面でも活用されています。
「リラクセーション法」を1つでも知っておくことで、緊張した自分の身体をリラックス状態に切り替えることができます。つまり自分で自分をコントロールできるようになれるのです。このブログではこれから「リラクセーション法」を順に紹介していく予定です。
皆さんが、紹介したものの中から気になったものを実際に試してみて、それが自分に合っていたようであれば、ぜひとも自分自身のものにしてもらえればと思います。
「リラクセーション法」を通して、自分で自分をコントロールできるようになれば、不安や緊張状態にある自分を、そこから救い出すことができます。
皆さんが少しでも、本来の自分自身を取り戻してもらえれば、これ以上の喜びはありません。