【腹式呼吸がうまくできない人のために①】:「肩上下呼吸法」をやってみよう。

OODAN:夕日を背景に呼吸する リラクセーション

腹式呼吸が緊張緩和や不安軽減に効果があると言われています。ところが、この腹式呼吸がうまくできないと訴える方が、結構いらっしゃいます。

そのような人のために、腹式呼吸と同じような効果が期待できる“呼吸法を紹介します。

ODAN:樹木の木漏れ日

今回紹介するのは、「肩上下呼吸法」と言う方法です。

とても簡単にできますから、一度試してみて下さい。

はじめに。

「緊張したときには、“腹式呼吸”をやるとよい」とよく言われます。実際に試されている方も多いのではないでしょうか。

私たちの相談室にやってくるクライエントさんにも、リラクセーション法の指導の一環として、この“腹式呼吸法”を取り上げています。多くの方は、比較的上手に腹式呼吸ができるようになります。

ところが中には、うまくできないと訴える方もいらっしゃいます。

実際、クライエントさんからも:

  • 「緊張した場面でやってみたが、うまくできませんでした」
  • 「焦ってしまって、かえって緊張してしまいました」
  • 「自分がちゃんとやれているのかどうかわからず、心配になりました」
  • 「深い呼吸ができずに、余計に不安になりました」など。

このような「腹式呼吸がうまくできない」と言った相談を受けることがあります。

「腹式呼吸法」は、確かに副交感神経を優位にさせて、リラックスをもたらすとても良い方法なのですが、実際にやってみたときに、逆に不安や緊張が強まってしまったとしたら、本末転倒です。

そこで、緊張した場面や息苦しさを感じてしまった場面でも、自分一人で簡単に落ち着いて行える“呼吸法を紹介します。

それが「肩上下呼吸」です。

以下に、その手順を紹介します。

手順(1):始める前の「姿勢」を確認しましょう。

椅子に座ってもできます。また、立ったままでもできます。

ここでは、椅子に座った方法でやってみます。

身体の力を抜いた自然な姿勢を作ります。

両足は少し開け、足の裏をしっかりと床に付けましょう。

両腕は、身体の脇で肩からダラーンとつり下げている感じです。

これが、デフォルト状態(初期状態)になります。

手順(2):両肩を引き上げながら、ゆっくりと息を吸い込みます。

それでは、始めましょう。

最初は、両腕がブランブランした状態です。

その状態で、両肩をゆっくりと引き上げながら、息もゆっくりと吸っていきます。

息を吸うのは、鼻でも口でも構いませんが、できれば鼻から吸うのがよいでしょう。

両肩を引き上げながら、ゆっくり息を吸い込んでいくと、自然と背筋もまっすぐに伸びていくのが、感じられます。

両肩を引き上げるにしたがって、外気が鼻から肺に向かって吸い込まれていくのが分かります。

胸部や腹部のふくらみ具合も感じ取ってみましょう。

息を吸い込んでいるのを感じながら、さらに両肩を引き上げていきましょう。

手順(3):息を限界まで吸います。肩も限界まで引き上げます。

両肩を引き上げられる限界まで引き上げていきましょう。

もしっかりと吸えるところまで吸い込みます。

息を限界まで吸い込んだタイミングで、両肩が一番上まで引き上げられるとよいでしょう。

吸い込んだ息で、胸が張っているのを感じましょう。

また、両肩や首のあたりに力が入っているのも、感じ取ってみましょう。

手順(4):息を吐くと同時に、両肩の力も一気に抜きましょう。

次は、息を吐いていきます。ここが大事なところです。

「息を吐くときは“一気に吐く」のがポイントです。

息を吐くのは、鼻からでも口からで構いませんが、口からの方がよいでしょう。

肺にたまった空気を、口から一気に「パッー」と、すべて吐き出す感じです。

それと同時に、両肩の力も一気に抜きます。

両肩を落とそうとするのではなく、力の抜けた両腕が、自然にストンと落ちる感じです。

両腕下方向引っ張るのではありません

「息を吐く」ときのポイントをまとめます:

  • イメージするとすれば、パンパンに膨らんだ風船”の口を開くと、そこから一気に空気が抜けていくように、口から「パッー」と息を吐き出す感じです。
  • 息を吐き出していくと、全身を覆っていた身体の張りも、吐き出される息と一緒に、パッー」と抜けていくように感じられるとよいでしょう。
  • 息を吐き出した後に、全身の力が抜けているのを、味わってください。

ここまで、うまく出来たでしょうか。

この「手順(2)~手順(4)」が、「1セット」になります。

手順(5):ここまでの(2)~(4)を繰り返します。

これまでにやった「手順(2)」から「手順(4)」が「1セット」です。これを「5~8セット」繰り返してください。

ここで改めて「1セット」の“流れを確認しておきましょう:

  1. イメージとしては、息を吸い込む“ポンプ”のように、両肩を引き上げる感じです。
  2. 両肩を引き上げながら、鼻から「スー」と息を吸い込みます。
  3. の吸い込みも、両肩の引き上げも、同時に限界まで来たところで止めます。
  4. この後、口から息を「パッー」と一気に吐き出すと同時に、両肩の力を抜きます。
ODAN:座禅する人たち

両肩を引き上げるときの「速さ」については、以下のよう考えてみましょう:

  1. 最初緊張している場面では、息を十分に吸い込めないものです。
  2. そのため、息を吸う段階では、両肩を引き上げることだけに意識を向けて、少し速めに両肩を引き上げます。
  3. 「1~2秒」で息を吸いながら、両肩を引き上げてみましょう。
  4. 次に、息を吐く段階に移ります。このとき、両肩のことは気にせずに、息を吐くことだけに意識を向けていてください。
  5. 息を一気に「パッー」吐き切ることが大切です。
  6. この要領で「肩上下呼吸法」を「数セット」繰り返していると、息が吸えていることが自分でも感じ取れてくるでしょう。
  7. しっかりと息が吸えていることが分かったら、つぎの「数セット」は、両肩をゆっくりと引き上げ、息もゆっくり吸い込んでいきましょう。
  8. しかし、息を吐くときは、毎回一気に「パッー」と吐くことを忘れないで下さい。
  9. 息を吐き切ったときに、両肩の力が抜けているのが感じ取れているでしょうか。
  10. 「5~8セット」くらい繰り返せば十分でしょう。
  11. 最後の「1セット」は、さらにゆっくりと行って、「肩上下呼吸法」を終了してください。
  12. 「5~8セット」やってもまだ足りないと感じる人は、連続してすぐに行うよりも、少し時間をおいてから再び「5~8セット」やる方が効果的です。

まとめ:実際に活用する場面でのポイント。

「肩」と言うのは面白いもので、その人のその時の“感情を表すと言われています。

怒っているときは、肩が上がっていますし、不安や緊張を感じているときは、肩に力が入っているものです。

今回紹介した「肩上下呼吸法」は、この「肩」を自分で“意図的に動かして、自分の感情をコントロールするための方法でもあります。

あなたがとても緊張しているときは、あなたの肩に力が入っていて、息もうまく吸い込めないものです。

このようなときこそ、自分の両肩に意識を向けて、意図的に両肩の引き上げてみましょう。

イメージとしては、「水汲みポンプ」「柄」を速く上下させて、水をたくさん汲み上げるように、両肩を速く引き上げていくとよいのです。

ODAN:水汲みポンプ

何度かこの「肩上下呼吸」で呼吸を続けていると、深くしっかりと息を吸い込めていることに気づきます。

それに気づけたら、両肩をゆっくりと引き上げていきましょう。するとさらに息を深く吸い込めることが分かります。

ただし、息を吐くときは、毎回一気に「パッー」と吐くことを忘れないで下さい。

そして、最後の「1セット」を行う時は、意識的にゆっくりと行いましょう。息もすべて吐き出してしまいましょう。

このときに、自分の身体をそれまで支配していた緊張感が消えて、全身が楽になっていることに気づけるでしょう。

自分の身体がリラックスしている感覚を、十分に味わってみて下さい。

最後に。

「腹式呼吸法」はとても有効な方法ですから、これはこれで続けて頂いて構いません。

しかし、実際の場面で「腹式呼吸法」がうまく使えないと分かったときは、焦ることなくこの「肩上下呼吸法」を試してみて下さい。

両肩を引き上げているのを自分でもしっかりと感じ取れますし、自分がちゃんと呼吸していることも、両肩の上下運動から自覚できます。

そのため、「自分はちゃんと呼吸ができているんだ」と分かるので、安心感が高まるようです。

ただ、人によっては、「この方法でもうまく行えない」と感じるかもしれません。その場合は、無理にこの“呼吸法にこだわる必要はありません。

これ以外にも“呼吸法”は、いろいろな方法があります。このブログでも紹介して参りますので、それを試してみて下さい。

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