大切な会議や試験を前にすると、誰でも不安感や緊張感が高まるものです。その対処方法として、「呼吸法」が有効であることは、よく知られています。
今回はさまざまな「呼吸法」の中でも、自分一人で、いつでもどこでも、すぐにできる「片鼻呼吸法」を紹介します。

はじめに、「予期不安」について、知っておきましょう。
大切な会議や試験に臨む前に、「本番で緊張したらどうしよう」と言った考えが浮かぶことは、決しておかしなことではありません。
ところが、普段から不安感や緊張感が強い人は、どうしても自分が不安や緊張に襲われる場面に対して、過度に敏感になりがちです。
中には、大切な会議や試験が行われるかなり前から、そのことが気になってしまい、悩み込んでしまう方もいらっしゃいます。
このような悩みを抱えて来室された方に対して、しばしば「心理教育」を行わせて頂くことがあります。

カウンセリング場面で「教育」を行うなどと言うと、戸惑われてしまわれた方もいらっしゃると思います。
そこで、「心理教育」について少し解説致しましょう。今回のテーマである「不安」を例に挙げてお話します。
- 【“不安”に対する“心理教育”】…「不安」で悩まれて相談室にいらっしゃった方に対して、「不安」が起きる心理的メカニズムを、ご本人の悩みを伺いながら解説させて頂き、来室された方が、自分自身に今、何が起きているのかを理解して頂くことで、この方の悩みである「不安」にまつわる問題の解決や改善を図るもの。
この「“不安”に対する“心理教育”」のときに、お話する内容の一つに、次のようなものがあります:
将来巡ってくるであろう不安や緊張が高まる場面を、その場面がまだ来ていないときから、いろいろと想像して悩んでしまうことが、かえって不安感や緊張感を高めてしまうことがある。
これは、「予期不安」と呼ばれる種類の「不安」が引き起こす心理状態です。
「予期不安」とは、「自分に、もしも〇〇なことが起きたら、どうしよう」と、頭に浮かんでくる「不安な場面」を、次々に考えてしまうことから生まれる不安です。
まだ実際には起きていないことに対して、不安を感じて悩んでしまうことから、「先取り不安」と呼んだりもします。
この「予期不安」にとりつかれてしまっている人は、誰もが感じる「一般的な不安(健常不安)」に、この「予期不安」が加わりますから、さらにつらい思いをしてしまうことになります。
「不安や緊張は誰でも起きるものだから、大丈夫だよ」などとアドバイスされても、このような方には、あまり役立ちません。
「もしも、“本番”で緊張したらどうしよう」という「考え」に捉われてしまっているため、次々に不安が予想されてしまって、「予期不安の“ループ”」から逃れられなくなってしまっているからです。
むしろこのような状態に陥ってしまっている人には、「発想の転換」ができるようになることが求められます。

ここで言う「発想の転換」とは、どのようなものかと言えば:
- 「自分が“本番”で、不安や緊張に襲われたら、どうしよう」と考えて、新たな不安や緊張を呼び出してしまうことを止める。
- その代わりに、「自分が不安感や緊張感を感じたときは、“~”をやればいいんだ」と考えて、「そのための具体的な行動は何か?」と考えを巡らす。
ということです。
ここに掲げた文の「“~”」の部分には、自分が実際に「過度の不安や緊張」に襲われたときに、それを「適度な不安や緊張」に変えてくれるための、自分がその場で行う「具体的な方法」が入ります。
この「具体的な方法」をたくさん持つことが、「予期不安」ばかりでなく、いわゆる一般的な「不安」や「緊張」への対策にもなるのです。
このサイトの「ブログ」の中で、そのための「具体的な方法」を、いろいろと紹介してありますので、それを参照して頂けると有難いです。
【ブログ】:#「リラクセーション」、など。
これから取り上げる「片鼻呼吸法」も、この「“~”」に入る「具体的な方法」の一つです。
この「片鼻呼吸法」も、自分一人で、いつでもどこでもやれる、とても簡単な方法です。
「自分が不安感や緊張感を感じたときは、“片鼻呼吸法”をやればいいんだ」と思えるように、普段から練習して、この「片鼻呼吸法」が自分に役立つことを、確かめておいてください。
「備えあれば、憂いなし」です。きっと、本番で役に立つことと思います。
紹介する「片鼻呼吸法」が、上述の「“~”」に入る、あなたにとっての新たな「具体的な対処方法」に加わればと思います。
「片鼻呼吸法」の手順。
ここでは、「右手」と「左手」の両方を使う方法の「手順」を、解説します。
①最初は、「右手」の「人差し指」を使って、行います。

②「右指」で「右の小鼻」を押さえます。

③そのままの状態で、「左の鼻の穴」から息を、ゆっくりと吸い込みます。

④息を限界まで吸い込んだら、指を離して、パッと息を、一気に吐き出します。

⑤次は、「左手」の「人差し指」を使って、「右手」のときと同じように行います。

⑥「左手」の「人差し指」で「左の小鼻」を押さえます。

⑦そのままの状態で、この度は「右の鼻の穴」から、ゆっくりと息を吸い込みます。

⑧吸い込む息が、限界まで来たら、指を離して、口から一気にパッと、息を吐き出します。

⑨この【①】~【⑧】までが、「1セット」になります。これを、「10セット」ほどやってみて下さい。
「10セット」ほど繰り返したころには、「過度の緊張感や不安感」が取れていることでしょう。
また、新鮮な空気を鼻から吸い込むことで、頭がすっきりしてきて、それまでのだるさが取れで、少しばかり「やる気」や「元気」が出てくることでしょう。
このような状態が「適度な緊張状態」になります。この状態を、ぜひとも味わってみて下さい。
「片鼻呼吸法」のコツ。
この「片鼻呼吸法」のコツは:
- 息を吸うときは、顎を少しあげながら、息を大きくゆっくりと吸い込むとよいでしょう。
- 息を吐くときは、小鼻から指を離すのと同時に、口から一気に息を吐き出すとよいでしょう。
この「片鼻呼吸法」では、身体の変化にも、意識を向けられるようになると、さらに効果が高まります。例えば:
- 息を吸うときは、息が入ってくると、胸が膨らんでくるのを感じましょう。
- 息を吐くときは、小鼻から離した手がストンと下に落ちるように、腕の力も抜けるとよいでしょう。
息を吐き切ったときに、胸の張りがなくなり、肩の力が抜けているのを味わってから、次の「セット」に進むようにしましょう。
慣れてきた人は、息を吸ったときの胸、肩、首、顎のあたりの「はり・こり(緊張感)」を、吐く息とともに、一気に抜けるように、試してみましょう。
普段からこれらのことを意識して行っていると、自分自身に起きる「脱力感」を感じられるようになります。
その結果、身体全体が楽になっていることでしょう。
まとめ。
「リラックス」と言うと、なんとなく身体全体がダラーとなってしまったような状態を考えがちです。
しかし、これは本来の「リラックス」ではありません。
「リラックス状態」とは、「過度な緊張状態」から「適度な緊張状態」になることです。
大切な会議や試験に臨まなければならない場面ですから、そのときに緊張感がまったくなくなってしまっては、かえって眠気に襲われたりして、本来持っていた力を本番で発揮されない事態になってしまいます。
そのため、普段からこの「片鼻呼吸法」を使って、自分の身体を「適度な緊張状態」に持っていけるように、コントロールする「練習」を積んでおくことが大切です。
このような練習は、日々行う日課のようなものですから、「レギュラー・トレーニング(標準訓練)」と呼んでいます。
「レギュラー・トレーニング」は、自分の持っている「具体的な対処方法」という「道具」が、ちゃんと使えるかどうかを「点検」するようなものです。
日ごろから「習慣」として「片鼻呼吸法」を行っていれば、会議や試験の会場であっても、直前に「数セット」やっただけで、その効果を十分に発揮してくれることでしょう。

日々の点検で、自分の身体をコントロールできることが確認できることは、「予期不安」への対処としても役立ちます。
「不安」や「緊張」の対処法は、「不安や緊張が起きたらどうしよう」と考えるのではなく、「起きたら“~”をしよう」と考えられるようになることが大切です。
そして、この「“~”」に入る「具体的な方法」をたくさん持っていることが、とても重要なのです。
なぜなら、「“~”」に入る方法が一つしかないと、それにしがみついてしまいますし、それが本番で役に立たなくなってしまったら、逆にパニックになってしまうからです。
ところで、この「“~”」のところに入る「具体的な方法」は、人それぞれ違うものです。
今回取り上げた「片鼻呼吸法」は、誰でも同じように有効であるとは限りません。人によっては、合わないこともあります。
そのために、普段から自分に合った「具体的な方法」を、たくさん見つけられるようにしておく必要があります。

この「片鼻呼吸法」には、もう一つの効用があります。それは、「マインドフルネス」を体験することはできるということです。
「片鼻呼吸法」を行うことで、過度の不安や緊張状態に陥ったときに、その「状態」に意識を向けるのではなく、その時の「呼吸」に意識を向けることが、過度な不安や緊張状態から脱することに役立つからです。
息を吸ったり吐いたりするときの「身体」の、その時々の「変化」にも、意識を向けてみるのも、とても有効です。
それまでの乱れていた心が、「今、ここ」に向かって落ち着き、心の彷徨いがなくなっているのに気づくでしょう。
今回紹介した「片鼻呼吸法」を通して、皆さんが自分自身の「今、ここ」の心に向き合い、自分自身の身体状態を自分の望む方向に向けられるようになって頂けたとしたら、とても嬉しく思います。
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