
仕事で大きなミスをして、上司から「お前は、全く役立たずだ」と強く叱責されてしまいました。
自分の不注意で職場に迷惑をかけてしまい、本当に私は会社の役にまったく立っていないと思います。
自分は何年たっても役立たずな社員なんです。
≪これは「架空事例」です≫

友だちと一緒に出かける約束をしていたのですが、その日に別の用事が急に入ってしまって、友だちとの待ち合わせをすっかり忘れてしまったんです。
その日の夜にその友だちから電話がかかってきて、「約束を破っておいて、謝罪の電話もよこさないなんて、信じられない。人として最低。もうあなたとは、絶交よ!」と言われてしまいました。
私から「会おう」と約束をしておいて、それを忘れてしまい、連絡もしないですっぽかしてしまったのですから、私が完全にいけないんです。
私って最低な人間なんです。
≪これは「架空事例」です≫

・自己否定感が強いことで悩んでいらっしゃる方の相談をお受けしていると、この「架空事例」によく似た体験談を、クライエントさんが打ち明けて下さることがあります。
・確かにご本人の側に落ち度があったのは事実ですから、それを苦にして自分を責められて、自己否定的になっている部分もあるのでしょう。
・しかし、そのこと以上に、相手から浴びせられたその時の「言葉」が、その後も繰り返しご本人の頭の中を巡ってしまい、それがご自身の心を繰り返し傷つけるために、自己否定感が強められている部分も大きいように感じられます。
・今回は、この「他人が発した“言葉”」によって、自分の“心”が傷つけられてしまう「意外な“原因”」とその「対処方法」について、一緒に考えてみたいと思います。
次のブログ:「言葉の影響2」を読む。>>>
「外言(がいげん)」と「内言(ないげん)」を知っておきましょう。
少し理屈っぽいお話から始めることを、お許しください。
今回のブログは「心理学用語」を使っての説明となりますが、なるべく分かりやすくお話ししますので、皆さんも頑張ってついて来て下さい。
それでは始めましょう。
ここで皆さんに知って頂きたい「心理学用語」は、「二つ」あります。
それは、「外言(がいげん)」と「内言(ないげん)」です。
今回も「Aさん」と言う人物を「例」に挙げて、お話を進めていくことにしましょう。
「Aさん」の「“外側”の世界」で飛び交う「外言」とは?
「Aさん」が自分の周りを見回すと、さまざまな人や物に取り囲まれていることに、Aさんは気づきます。
Aさんにとってこれらは、Aさんを取り巻く「外側の世界」です。
この「外側の世界」には様々な人が居て、この人たちとAさんは「言葉」を交わしたります。
また、この「外側の世界」に居る人同士がお互いに交わす「言葉」を、Aさんは耳にしたりもします。
このときAさんにとっての「外側の世界」で使われている「言葉」を、心理学では「外言(がいげん)」と呼びます。
英語では“external speech(エクスターナル・スピーチ)”と言いますので、まさに私たちの「“身体の外”で飛び交っている言葉」が、この「外言」なのです。
「Aさん」の「“内側”の世界」で飛び交う「内言」とは?
たくさんの人や物にAさんは取り囲まれていますが、実際にAさんを一番近くで取り囲んでいるのは、Aさん自身の「身体」です。
Aさんを取り囲んでいる「身体の世界」は、Aさん自身の身体ですから、Aさんにとっては「内側の世界」になります。
Aさんの「頭の中」もAさんの身体の一部ですから、Aさんの「頭の中」も当然Aさんにとっての「内側の世界」です。
この「内側の世界」である頭の中で、Aさんは、さまざまなイメージや場面を思い浮かべることもありますが、その一方で、Aさんが一人で何かを考えるときには、やはりここでも「言葉」が飛び交います。
この「言葉」は、Aさんの「内側の世界」で飛び交っている言葉なので、これを心理学では「内言(ないげん)」と呼びます。
英語では、“inner speech(インナー・スピーチ)”と言いますので、「“頭の中”で飛び交っている言葉」と言ってもよいでしょう。
「外言」と「内言」を、ここで整理しましょう。
ここまでをまとめます。私たちが普通に使っている「言葉」は、「外言」と「内言」に分類することができます。
外言(external speech)とは:
- 人と人との間、つまり個人間(こじんかん)での情報のやり取りで使われる言葉のこと。
- 他人との「コミュニケーションの道具」として使うもの。
内言(inner speech)とは:
- 一人の人の頭の中、つまり個人内(こじんない)での情報のやり取りで使われる言葉のこと。
- 自分が「考えるための道具」として使うもの。
このように「外言」と「内言」を整理することができます。
私たちは頭の中で「いったい誰」とやり取りしているのでしょうか?
いま、「内言」が「自分の“頭の中”で“言葉”のやり取りをするときに使われるもの」と述べましたが、いったい自分の頭の中の「誰と誰との間」で、「言葉」をやり取りしているとあなたは思いますか?
答えは、「自分と自分との間」です。
つまり、「自分が自分に語りかけている言葉」、あるいは、「自分が自分自身に向けて発しているときの言葉」が、「内言」なのです。
「言葉」が“心”に影響を与えることを巡って。
「言葉」というものが私たちの“心”に大きな影響を与えていることを、私たちは小さいころからの経験をとおして、とてもよく知っています。
たとえば、他人から「温かい言葉」をかけてもらえば、私たちの心も温かくなります。
しかしその一方で、他人から「心無い言葉」をかけられると、私たちの心は痛みます。
このような私たちの心に与える「言葉」の影響を、先程整理した心理学用語で表現してみると、どうなるでしょうか。
他人からの「言葉」による影響ですから、これは「外言」のことになります。
すると:
他人が発する「外言」によって、私たちの“心”は影響を受ける。
このようになるでしょう。
「“指示・命令”する外言」とは?
私たちの「外側の世界」で飛び交う言葉が「外言」ですから、「外言」には様々な内容を含んだものがあります。
その中でも、私たちにとりわけ大きな影響を与える「外言」とは、どのようなものでしょうか。
たとえば、他人から「落ち着いて」や「しっかり頑張って」などの「外言」が発せられると、それを聞き取った私たちはその「外言」に従って、落ち着いて行動したり着実な行動を取ろうとしたりします。
その結果、私たちの気持ちも実際に落ち着いてきます。
このとき使われている「外言」は、他人が私たちに対して「指示・命令」を出しているものでから、「“指示・命令”する外言」と呼ぶことができます。
「内言」にも「“指示・命令”する”内言」があります。
私たちが「落ち着いて」とか「しっかり頑張って」などと言った「言葉」を発するのは、必ずしも他人に向けてばかりではありません。
私たちは自分自身を落ち着かせたかったり頑張らせたかったりするときに、自分に向けて「落ち着け、落ち着け」「しっかり、しっかり」「がんばれ、がんばれ」と言った「言葉」を発することがあります。
これらの「言葉」は、私たちの「内側の世界」で発せられていて、しかも、自分自身を「指示・命令」するために発せられた「言葉」ですから、これらは「“指示・命令”する内言」と呼べるものです。
言い換えれば、自分で発した「“指示・命令”する内言」を、自分が聞き取ることで、自分自身の気持ちは落ち着いてきますし、しっかり頑張ろうと言う気持ちにもなってくるのです。
このように考えると、「内言」には、次のような側面があることが分かります。
私たちは「内言」を使って、自分自身の気持ちをコントロールすることができる。
「内言」は、このように「自分の心に“意図的”に影響を与える道具」としても、使うことができるのです。
自分の「口癖」に気をつけよう。
すでにお話ししたように、私たちは「内言」を「考えるための道具」として使いますから、私たちが何気なく何かを考えているときには、もうすでに「内言」を使っていることになります。
と言うことは、自分でも気づかぬうちに、私たちは自分自身に向けてさまざまな「内言」を発していることがあるのです。
このときに発せられている「内言」の中には、特に気をつけたいものがあります。
それは、「“口癖”の言葉」として発せられる「内言」です。
たとえば、「どうしよう、どうしよう」と言う言葉を“口癖”にしている方の中には、いつまでも気持ちがそわそわしてしまい落ち着けない方がいらっしゃいます。
なぜこのようなことが起きるのでしょうか。
もうお分かりのように、「どうしよう、どうしよう」という「言葉」が発せられることで、自分の心がまさにそうなるように、この「内言」を使って自分自身に“指示・命令”を出しているからです。
ところが、もしもこの同じ方が、「まあ、いいか」とか「なんとかなるでしょう」と言う「言葉」を、あえて“口癖”として使ったとすれば、どうなるでしょうか。
「まあ、いいか」や「なんとかなるでしょう」と言う“口癖”が、今度はこの方の「“指示・命令”する内言」として自分自身に発せられますから、この方の行動はそんなにせかせかしたものではなくなるのではないでしょうか。
また、その結果、その方の気持ちにも余裕が生まれてくるかもしれません。
このように考えると、ここで起きた「“口癖”にまつわる心理現象」を、次のようにまとめることができます。
自分の「性格」を変える一番簡単な方法は、自分の「“口癖”を変える」ことである。
ちょとした「格言」のようにまとめましたので、これを覚えておいて、ぜひとも実践してみて下さい。
終わりに。
このブログの冒頭で紹介した「架空事例」の相談ケースについて、最後に考えてみましょう。
もしも「自分は役立たずだ」とか「自分は最低だ」とかといった「言葉」を、その後この「お二人の相談者」が“口癖”にしてしまったとしたら、この方たちはその後どうなってしまうでしょうか。
この“口癖”は、相談者自身に「“指示・命令”する内言」として働きますから、「お二人の相談者」は自分自身を「役立たずの人間」や「最低の人間」として、本当に捉えてしまうのではないでしょうか。
そうなれば、お二人の自己否定感はますます強まり、気持ちもいっそう沈んでしまうのに違いありません。
このような悲劇的な展開にならないためには、どうすればよいでしょうか。
それはもうお分かりのように、ネガティブな内容であった“口癖”を、すぐに止めることです。
そして、出来ればポジティブな内容の“口癖”に、変えてみることが求められます。
実際、「自分の性格を変える方法を知りたい」と言って相談室にいらっしゃったクライエントさんにも、この“格言”を紹介したことが、これまでにもありました。
あなたも、このブログを参考にして、ぜひとも実践してみてください。
あなたに、何らかのポジティブな変化が起きたとすれば、私はとてもうれしく思います。
